JAL格安航空券

現地現物。

あれは2005年にOPENした中部国際空港セントレアを見に行こうと

研修ツアーを組んでJALのエージェントディスカウント航空券を使った時のこと。

せっかくだから色々な空港を体験しようと羽田から福岡に飛び、福岡から中部国際空港にフライトした。

 

 

だって羽田から中部へは距離が近過ぎて飛行機は飛んでいないから。

セントレアの1フロアーにまとまった国内線・国際線チェックインカウンターを見学して、

お店やレストランが並ぶちょうちん横丁やレンガ通りを歩き、

それから出発ゲートの各航空会社のラウンジに入れてもらった。

それで中部から名古屋へと続く名鉄特急に乗って帰るとき、ケンとJALの格安航空券の話になったんだ。


「旅子はお客さんからJALの格安航空券を取ってくれって言われたらどうする?

あ、もちろん海外のことだよ」

それは困った。だって国際航空券でJALの格安チケットなんて聞いたことないもん。

あのね、格安航空券って旅行会社の人たちとってはちゃんと意味があって、

ゾーンペックスっていう航空会社が公に出している世紀割引運賃ではなく、

いわゆる一般市場で売られている値段優先のよく分からない航空券のことなの。

それって元々は団体旅行で使うため航空会社から大量に仕入れたチケットを

安くバラ売りしているもので、正体が不明なの。

よく分からないけど、ただ安い。取りづらいけど取れたらちゃんと乗れるし、

変更とか払い戻しができなくても料金はお得。

全ての旅行会社が格安航空券を取り扱っているわけではなくて、

そういうところに特化しているトラベルエージェントが強いから、

ウチみたいな大企業の子会社で、海外出張手配が主業務のインハウスエージェントには手が出せない。


「ええと、ね。JALの格安って存在しないし、別にエアオンで取れってことでもないし、要は料金でしょ。

エコノミーセーバーの早割りで案内するよ」

そう答えるとケンは頷いて話してくれた。

「そうですよね、エコノミーセーバーの14日前なり

21日前なりの早割が一番安いってことになるよね。

以前はそうでもなかったけど、最近は他社のエアオンと並ぶような

低料金のチケットがゾーンペックスでも設定されているんだ」

「なんかJALとかANAとか日系の航空会社は

団体旅行航空券のバラ売りのエアオンってイヤがっているでしょう?

できる限り出さないようにして早割りを買わせようとしてるって聞いたよ」

「そう、そう。チケットの条件が良く分からないエアオンより、

航空会社がルールを定めた早割りをメインにすることで低料金の顧客を透明化させたかったらしい。

それからネットを通じたホームページの直販も普及させて

旅行会社へのコミッションを削減したかったみたいだね」

 

 

「そう聞くよ〜。やっぱりJALとかANAって格安航空券ってないんだ〜」

「ほとんどないよ。でもまだほんの一部、マニラ線とか中国線とかは

微妙に残っているところがあるけどね。

それも時間の問題で消滅してゆくだろうよ。

JALとかANAだけじゃなく、他の外資系航空会社も同様にAPEX、

正規早割り航空券を売り出しているんだ。

直売と格安航空券の衰退は視野に入っている。

旅行会社がコントロールする格安航空券もゼロにはならないだろうけど、

いずれは航空会社が自分でコントロールする正規割引運賃が中心になってゆく」


「そうね。そんな旅行業界の内部事情はさておいて、

お客さんは要は安いエアチケットが欲しいのだから。

早く予約してくれて早期購入だから早く日程を決めてくれるといいんだけどね。

難しいかな?」

名古屋駅前に近付いてくるとトヨタ自動車の入っているミッドランドスクウェアや

マリオットホテルや高島屋のある超高層の駅ビルが見えてきた。

今日は移動ばかりで疲れたわ。あとはのぞみで品川駅まで戻って終わり。

JAL格安航空券なんてものに横道したけど、これも旅行中のひとつの出会いね。

変わってゆく世の中の状況に合わせて、わたし自身も変わってゆきたいって願うの。

ノーマル航空券 正規運賃

「トラベルにトラブルは付き物だけど、ノーマル航空券で変更できなかった時ってホントにつらいね」

笑い飛ばすようにケンが言う。でもそれって笑い事じゃなくない?

「今も昔も状況は変わってない。

これって経験論だから、一方的に決め付けてしまうけどインド国内線と中国国内線で変更が入ったとき、

例え同じキャリア、同じルートの日付変更や時刻変更だけでもすんなり変更できた記憶があまりないんだ」

 

 

「それってノーマルチケットでも?」

「そう。ノーマルものーまるで、何の制限も割引もない"どノーマル"だよ。

こっちで端末をいじってフライトを変えて、

お客様にこれはノーマル航空券だからそのままのチケットで搭乗できます、

とIATAルールに乗っ取って案内しても、当日空港で変更できずにもめて、

結局新たにチケットを買わされた、なんてケースはザラにあるよ」

「へぇ〜。なんかクレームで上がってきそう。

できないものはできないって仕方ないと思うけどさぁ、それってなんで変更できないの?」

よく分からないから聞いてみる。ケンはなんでも知っているからちゃんと答えてくれる。


「変更できるんだよ、国際航空券のルール上は。

チケット上にもちゃんとノーマルで何の制限もないことは書いてあるし。

NON-REROUTE, NON-ENDORSEMENT, NON-RESERVATION CHANGE

なんてどこにも書いてない。

でもね、まぁ、空港スタッフも面倒くさいのさ。

お国柄の問題、彼らからすれば外国発券のよく分からないチケットを持った外国人が

無料で変更できるはずだから変更しろ、と言ってきたらどんな対応をすると思う?」

「あ〜。そう言われると微妙だねー。

じっくり時間かけて変更できるかどうか調べてあげるような親切な人っていないってこと?」

「そうそう。正直、海外発券のエアチケットって

運賃計算がどうなっているかもややこしいものだからね。

空港の航空会社スタッフも国際ルールをよく分かっている人ばかりではないし、

とにかくよく分からないからいっそ断ってしまって

目の前でチケットを買わせたほうがとりっぱぐれがなくて確実ってこと。

経験上、いわゆる先進国では変更はできたよ。

後進国ではあんまり上手くいかなかった」

「へぇ〜。そう聞くと納得できるけど、

その場に自分がいたら納得できないだろうな、わたし。

ケンはどうお客様に案内しているの?変更できる航空券です、って言っちゃう?」

「難しいところだね。旅子さん、僕はこう案内しているよ。

これは何の制約もない正規運賃の航空券だからルール上は変更できます、って。

でも実情は後進国では航空会社スタッフの知識不足とか

やる気のなさとかで変更できなかった例がたくさんあるから変更できない可能性が高い、って。

その時は新しくチケットを買ってもらい、帰国後に未使用航空券をリファンド、払い戻しする。

それが手っ取り早い解決方法です、って」

 

 

「なるほどねー。それならどっちに転んでも問題ないわね」

「変更って大変。それと、オープンチケットも同じことで、

ノーマルのオープン航空券でも実際は使えないことも多かった。

ルール通りに事が運ぶとは限らないんだよ。

だから、ルールは説明した上でその次に現実に起こることを案内した方がいい。

一方的な主張もいいけど、困るのはお客様だからね。

正解なんてないから、お客様のニーズに合うのが正しい案内さ」

そう言ってケンは話をまとめた。

うん、そうだね、ケン。相手の立場に立った案内が一番だよ。

ほら、またわたしの期待は裏切られなかった。

ケンはなんでも知っているし、ちゃんと答えてくれる人だから。

 

オーバーブッキング 航空会社

わたしも自分で体験したことがある。オーバーブッキング。

何故かビジネスクラスに座れたよ。

あれは成田からパリに飛んだエールフランスだったかな。

「わたしはオーバーブッキングっていい記憶しかないよ。

向こうの間違いとか読み違いもたまにはいいんじゃない?」

でもケンはそうじゃないみたい。

なんかイヤなもの食べたみたいな顔をしてこう言うの。

 

 

「それは運が良いオーバーブッキングに当たったからだよ!

僕はノースウエスト航空にやられたよ。

予約がとってあるのにチェックインが遅れたものだから乗せてくれなかった。

上に上がるどころか搭乗拒否で別のフライトに振り替えさ」

「えぇ〜。それってヒドくない?チケット買ったのに乗れなかったの?」

「そうだよ、だから僕はオーバーブッキングってキライだよ。

ビジネスクラスやファーストクラスにあがるどころか乗れないこともあるんだからね」

そうか、それも考えなくちゃいけないんだ。

でも予約OKの人を乗せないなんて本当にヒドイ。

許されてはいけないことだよね」

「ケン、航空会社のそういうオーバーブッキングの席数調節している人と話したことはある?

どんなこと考えてやっているのか一度は知っておきたいね」

「直接はないけどね、営業の人たちからたまに聞くよ。

仮に席数が100あったとして、予約自体は前々では110ぐらいOKにして、

直前になるにつれそれがどんどんキャンセルになったりして

上手く100ぐらいに収まるらしい。

えっ、なんで100席しかないのに110席も予約をOKにするのかって?

それは彼ら航空会社もビジネスだから必死さ。

100席に対して100席しか予約を受けていなかったら、

直前でキャンセルとか出た時に彼ら航空会社が困ってしまう。

直前になって予約が入ってくるとも限らないし、とにかく航空会社としては

その当日の100席をどれだけ100席に近くするのかが仕事だ。

 

旅行商品はその日その空間を売らないとただの空気となってしまうものが多い。

電化製品や缶ジュースみたいに今日売れなくても明日売れればいい、というものではないんだ。

航空会社もそのビジネスクラスに座ってくれる人がいてこそ金が入ってくるが、

オーバーブッキングせずに予約率が100%を切ってしまったら金は一銭も入ってこない。

だから大違いなんだよ。

それならば統計を取って当日は100%ちょうどに予約者と席数を

コントロールしてゆかないとどうにもならない。

彼らの立場とすればやりたくないかもしれないけど、やらないとメシが食えないんだ」

ケンはいつになく饒舌に語ってくれた。まるで航空会社の回し者みたいに。

 

 

「それは分かるけど、旅行者たちに取ったら怖いよね、オーバーブッキングって。

わたしみたいに上に上がっていい思いすればいいけど、

ケンみたいにおろされちゃうのって最悪。どうにかならないの?」

「ムリだよ、このオーバーブッキングのシステムはなくならないだろうな。

エコノミーとビジネスでは今度も繰り返されてゆくよ。

でもファーストクラスはないよ。

ファーストではオーバーブッキングはできないからね。

オーバーブッキングしてもその上のクラスはないし、

ファーストに乗るような人たちに他のフライトに乗ってくれなんてお願いできないでしょ。

大問題になるからね」

「あーなるほどねー。ファーストではオーバーブッキングはないんだ」

「そう。あとは当日空港でのチェックインだよね。

僕みたいに出発の1時間前に国際線チェックインクローズギリギリに

来ちゃうと危ないと言われているね。

2時間前とかにチェックインしておくとそういうこともなくて最後の方が降ろされる、と聞く。

いや、もしかしたら最後の人は上に上がるかもしれないから

ある意味おいしいかもしれないし。賭けだよね」

「えー、それって本当に一か八かでしょ。

上にあがるか、逆だったら乗れないってことでしょ?」

「まぁね。あとは事前に座席番号取っておくことが大事。

それと、オーバーブッキングになったら料金を安く買っている人からどかされるとも言われる。

マイレージの上級会員だったら狙われることも少ないと思うよ。

随分前は名前でアジアっぽい人が降ろされたり、

お金を上げるから他のフライトにしてくれと言われたり、みんな交渉ごとだよ」

「聞くねー。500ドルあげるから翌日のフライトはどうだ?とか、

ビジネスにするから他の便でどうだ?とかでしょ」

「そうそう。今はもう旅行者が合意しなければキャリアが

他の便に強制的に振替える、ということはできないと思うけど、

昔は結構強引にされていたんだ。

未来の航空業界でもこのオーバーブッキングは避けられないよ。

その日売れなければただの空気を目的地まで運ぶだけなのだから」


ケンは言った。オーバーブッキングのこと。

わたしも内部事情を少しは分かった気になったよ。

 

 






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