ノーマル航空券 正規運賃

「トラベルにトラブルは付き物だけど、ノーマル航空券で変更できなかった時ってホントにつらいね」

笑い飛ばすようにケンが言う。でもそれって笑い事じゃなくない?

「今も昔も状況は変わってない。

これって経験論だから、一方的に決め付けてしまうけどインド国内線と中国国内線で変更が入ったとき、

例え同じキャリア、同じルートの日付変更や時刻変更だけでもすんなり変更できた記憶があまりないんだ」

 

 

「それってノーマルチケットでも?」

「そう。ノーマルものーまるで、何の制限も割引もない"どノーマル"だよ。

こっちで端末をいじってフライトを変えて、

お客様にこれはノーマル航空券だからそのままのチケットで搭乗できます、

とIATAルールに乗っ取って案内しても、当日空港で変更できずにもめて、

結局新たにチケットを買わされた、なんてケースはザラにあるよ」

「へぇ〜。なんかクレームで上がってきそう。

できないものはできないって仕方ないと思うけどさぁ、それってなんで変更できないの?」

よく分からないから聞いてみる。ケンはなんでも知っているからちゃんと答えてくれる。


「変更できるんだよ、国際航空券のルール上は。

チケット上にもちゃんとノーマルで何の制限もないことは書いてあるし。

NON-REROUTE, NON-ENDORSEMENT, NON-RESERVATION CHANGE

なんてどこにも書いてない。

でもね、まぁ、空港スタッフも面倒くさいのさ。

お国柄の問題、彼らからすれば外国発券のよく分からないチケットを持った外国人が

無料で変更できるはずだから変更しろ、と言ってきたらどんな対応をすると思う?」

「あ〜。そう言われると微妙だねー。

じっくり時間かけて変更できるかどうか調べてあげるような親切な人っていないってこと?」

「そうそう。正直、海外発券のエアチケットって

運賃計算がどうなっているかもややこしいものだからね。

空港の航空会社スタッフも国際ルールをよく分かっている人ばかりではないし、

とにかくよく分からないからいっそ断ってしまって

目の前でチケットを買わせたほうがとりっぱぐれがなくて確実ってこと。

経験上、いわゆる先進国では変更はできたよ。

後進国ではあんまり上手くいかなかった」

「へぇ〜。そう聞くと納得できるけど、

その場に自分がいたら納得できないだろうな、わたし。

ケンはどうお客様に案内しているの?変更できる航空券です、って言っちゃう?」

「難しいところだね。旅子さん、僕はこう案内しているよ。

これは何の制約もない正規運賃の航空券だからルール上は変更できます、って。

でも実情は後進国では航空会社スタッフの知識不足とか

やる気のなさとかで変更できなかった例がたくさんあるから変更できない可能性が高い、って。

その時は新しくチケットを買ってもらい、帰国後に未使用航空券をリファンド、払い戻しする。

それが手っ取り早い解決方法です、って」

 

 

「なるほどねー。それならどっちに転んでも問題ないわね」

「変更って大変。それと、オープンチケットも同じことで、

ノーマルのオープン航空券でも実際は使えないことも多かった。

ルール通りに事が運ぶとは限らないんだよ。

だから、ルールは説明した上でその次に現実に起こることを案内した方がいい。

一方的な主張もいいけど、困るのはお客様だからね。

正解なんてないから、お客様のニーズに合うのが正しい案内さ」

そう言ってケンは話をまとめた。

うん、そうだね、ケン。相手の立場に立った案内が一番だよ。

ほら、またわたしの期待は裏切られなかった。

ケンはなんでも知っているし、ちゃんと答えてくれる人だから。

 

オーバーブッキング 航空会社

わたしも自分で体験したことがある。オーバーブッキング。

何故かビジネスクラスに座れたよ。

あれは成田からパリに飛んだエールフランスだったかな。

「わたしはオーバーブッキングっていい記憶しかないよ。

向こうの間違いとか読み違いもたまにはいいんじゃない?」

でもケンはそうじゃないみたい。

なんかイヤなもの食べたみたいな顔をしてこう言うの。

 

 

「それは運が良いオーバーブッキングに当たったからだよ!

僕はノースウエスト航空にやられたよ。

予約がとってあるのにチェックインが遅れたものだから乗せてくれなかった。

上に上がるどころか搭乗拒否で別のフライトに振り替えさ」

「えぇ〜。それってヒドくない?チケット買ったのに乗れなかったの?」

「そうだよ、だから僕はオーバーブッキングってキライだよ。

ビジネスクラスやファーストクラスにあがるどころか乗れないこともあるんだからね」

そうか、それも考えなくちゃいけないんだ。

でも予約OKの人を乗せないなんて本当にヒドイ。

許されてはいけないことだよね」

「ケン、航空会社のそういうオーバーブッキングの席数調節している人と話したことはある?

どんなこと考えてやっているのか一度は知っておきたいね」

「直接はないけどね、営業の人たちからたまに聞くよ。

仮に席数が100あったとして、予約自体は前々では110ぐらいOKにして、

直前になるにつれそれがどんどんキャンセルになったりして

上手く100ぐらいに収まるらしい。

えっ、なんで100席しかないのに110席も予約をOKにするのかって?

それは彼ら航空会社もビジネスだから必死さ。

100席に対して100席しか予約を受けていなかったら、

直前でキャンセルとか出た時に彼ら航空会社が困ってしまう。

直前になって予約が入ってくるとも限らないし、とにかく航空会社としては

その当日の100席をどれだけ100席に近くするのかが仕事だ。

 

旅行商品はその日その空間を売らないとただの空気となってしまうものが多い。

電化製品や缶ジュースみたいに今日売れなくても明日売れればいい、というものではないんだ。

航空会社もそのビジネスクラスに座ってくれる人がいてこそ金が入ってくるが、

オーバーブッキングせずに予約率が100%を切ってしまったら金は一銭も入ってこない。

だから大違いなんだよ。

それならば統計を取って当日は100%ちょうどに予約者と席数を

コントロールしてゆかないとどうにもならない。

彼らの立場とすればやりたくないかもしれないけど、やらないとメシが食えないんだ」

ケンはいつになく饒舌に語ってくれた。まるで航空会社の回し者みたいに。

 

 

「それは分かるけど、旅行者たちに取ったら怖いよね、オーバーブッキングって。

わたしみたいに上に上がっていい思いすればいいけど、

ケンみたいにおろされちゃうのって最悪。どうにかならないの?」

「ムリだよ、このオーバーブッキングのシステムはなくならないだろうな。

エコノミーとビジネスでは今度も繰り返されてゆくよ。

でもファーストクラスはないよ。

ファーストではオーバーブッキングはできないからね。

オーバーブッキングしてもその上のクラスはないし、

ファーストに乗るような人たちに他のフライトに乗ってくれなんてお願いできないでしょ。

大問題になるからね」

「あーなるほどねー。ファーストではオーバーブッキングはないんだ」

「そう。あとは当日空港でのチェックインだよね。

僕みたいに出発の1時間前に国際線チェックインクローズギリギリに

来ちゃうと危ないと言われているね。

2時間前とかにチェックインしておくとそういうこともなくて最後の方が降ろされる、と聞く。

いや、もしかしたら最後の人は上に上がるかもしれないから

ある意味おいしいかもしれないし。賭けだよね」

「えー、それって本当に一か八かでしょ。

上にあがるか、逆だったら乗れないってことでしょ?」

「まぁね。あとは事前に座席番号取っておくことが大事。

それと、オーバーブッキングになったら料金を安く買っている人からどかされるとも言われる。

マイレージの上級会員だったら狙われることも少ないと思うよ。

随分前は名前でアジアっぽい人が降ろされたり、

お金を上げるから他のフライトにしてくれと言われたり、みんな交渉ごとだよ」

「聞くねー。500ドルあげるから翌日のフライトはどうだ?とか、

ビジネスにするから他の便でどうだ?とかでしょ」

「そうそう。今はもう旅行者が合意しなければキャリアが

他の便に強制的に振替える、ということはできないと思うけど、

昔は結構強引にされていたんだ。

未来の航空業界でもこのオーバーブッキングは避けられないよ。

その日売れなければただの空気を目的地まで運ぶだけなのだから」


ケンは言った。オーバーブッキングのこと。

わたしも内部事情を少しは分かった気になったよ。

 

航空券 名前間違い

有楽町のJALプラザへ、STPCの受け取りのお使いに行った帰り道のこと。

お客さんへチケットデリバリーをしてきたというケンと帰り道が一緒になって

わたしたちは東京駅北口から丸の内へと歩いていた。

今日はJALプラザのカウンターで外国人の方がパスポートネームで

ファミリーネームとファーストネームが逆さになっているけど問題はないのか、

とJALに聞いていたよとケンに話すと、あの人は当たり前のような顔をして問題なかったろう?と言った。

 

 

いえいえ、JALプラザの女性の方はすごく丁寧に対応していて、

このままでは飛行機の乗れないから予約記録の中にメッセージを入れて

空港スタッフが混乱しないようにしておきます、と言って端末を叩いて

何かを入力していたの、と説明するとケンはおかしいな?という顔つきでわたしを見ていた。

航空券面のスペルとパスポートネームと同じにさせるって結構難しいことだよ。

日本人が日本人だけの予約をするのが多いこの国が特別さ、とケンが言う。


ケンは今まで色々なエアチケットを見たという。

その中にもヨーロッパ人たちのミドルネームを入れたり入れなかったりのことや、

スリランカ人の異常に長いファーストネームをどこで切っていいのか悩むとか、

インドネシア人にはそもそもファーストネームが存在しなくて

ファミリーネームしかない場合があるとか、

あとはありがちなのがファーストネームとファミリーネームが逆さになっていることとか、

スペルが1文字2文字違っているものとか、色々なパターンがあったそうだ。

だって自分と全く違うバックグラウンドや宗教を持っている人たち、

彼らの名前のスペルに秘められた文化の意味も分からないし、

スペルそのものに何か意思が入っているはずのものを僕たちは理解できる?

そして正確にそれをタイプできる?

わたしはやっぱり難しいと思う。要は本人確認できればいいんでしょ?

もしわたしが空港のエアラインスタッフだったら、チケットネームとパスポートを照らし合わせて

数文字のミススペルとか姓名が逆になっているとか、ミドルネームのありなしとか、

そんなのを問題にする気なんてないよ。


だろう旅子?そのJALプラザのスタッフがむきになって

ミススペルのフォローをしていたというのは日本人らしい美しい対応だけど、

そんなの大したことじゃないって。

一文字違うから搭乗拒否されたなんてこと聞いたことがないね。

全くの別人に席を譲るのを防ぐためなんだから、

落ち着いてみればチケット上のミススペルなんて問題になるはずないんだよね。

あの外国人、きっとブラジル系の人だと思うけど、

チケットネームのミススペルを気にしていたし、JALの人に助けられて嬉しそうな顔をしていた。

それはきっとアメリカ入国を心配したんじゃないかな?とケンに言われた。

大銀行の本店が建ち並ぶ丸の内を歩いて会社へ戻るところ。

皇居を訪れるのだろう外国人の姿をちらほら見かける。

 

 

ほら、ブラジルの人は日本との往復の際にアメリカを経由するし、

そこでは入国審査があり、トランジットビザも取らないといけない。

あれかなぁ、アメリカじゃブラジル人はいじめられるから

予約のネームとパスポートネームとビザネームが違うと

何か言われるんじゃないかと思って心配したのかなぁ、とケンがしゃべりかけてくる。

さすがだね、そうだったかもしれないよ、とわたしも同調した。

まぁ当の本人、空港のキャリアスタッフや入国審査官からしても

大した問題じゃないとは思うけど、日本人的な美しい心で

心配してあげていたJALプラザの人って素晴らしいとわたしは思った。

 

 






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